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ろんごものがたり
論語物語
下村 湖人
「現代」大日本雄弁会講談社、1938(昭和13)年
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 132,688 字 · 266 页
子曰く、始め吾の人に於けるや、其の言を聴きて其の行を信ぜり。今吾の人に於けるや、其の言を聴きて其の行を観る。予に於て是を改めたりと。――公冶長篇――
昼寝をしていた宰予は、いい気持になって眼をさました。あたりは森としている。彼は大きく背伸びして、欠伸を一つすると、のろのろと寝台を下りた。それから椅子に腰をかけて卓に頬杖をつきながら、ぼんやりと窓の外を眺めた。
中庭の石畳には、もう日がかげっている。雀が二三羽、急にそこから飛び立って、屋根にとまった。屋根瓦の頂上が黄色い夕日の光を反射している。その光の中に、雀が点々と真黒にならんだ。
少し寝過ぎたかな、と彼は思った。そして少し緊張した顔になって耳を澄ました。
遠くの室から、かすかに話声が聞えて来る。
(やはり寝過ぎたのだ。)
そう思って彼は少しうろたえた。そして椅子から立上ると、そそくさと室を出ようとした。しかし、彼は戸口のところまで行くと、急に立止まって、眼を床に落した。
(何か口実がないと工合が悪い。)
それからしばらく、彼は足音を立てないように、そろそろと室内を歩きまわった。歩きながら、何度も首をふったり、うなずいたりした。