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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
「成程」
と木下さんは履歴書を手にしたまゝ、首を傾げて考え込んでいる。頭の天辺から足の爪先まで新聞の興味に満ちた人だから、多少が気に入らないようだった。堀尾君は拙いことを言ってしまったと思って、
「若し使って戴ければ、今度は天職と信じて、一生懸命にやる決心です」
と付け加えた。
「君は大分変っているね」
「はあ?」
「人間が正直なんだろう?」
「嘘は滅多につきません」
「その通り正直だ。ハッハヽヽ」
と木下さんは理解してくれたらしく、
「こゝへ来る青年は皆新聞記者を天職と信じているから使って貰いたいと言う。君は使って貰えれば天職と信じるんですね?」
と念を押した。
「はあ」
「少し行き当りばったりのようじゃないですかね」
「しかし人間は誰でも然うでしょう?」
「成程」
「ナポレオンにしても初めからナポレオンになろうと思って、ナポレオンになったんじゃないと思います」
「成程」
「殊に僕のような凡人は有りついた仕事を天職と信じて、それに没頭するより外仕方ありません」
と堀尾君は安藤先生の教訓を利用した。
「面白い」
「それで興味がないんじゃありません。ないと言えば、何にでもないんです。