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まけないおとこ
負けない男
佐々木 邦
「講談倶楽部」大日本雄辯會講談社、1930(昭和5)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 98,799 字 · 202 页
天竺屋じゃあるまいし、矢っ張り年に一つ宛しか取りはしない」
「岩崎さんが何うかしたんですか?」
「この間、或寄合で一緒になったら、俺は六十二だから見渡したところ一番年頭だと言って、上座に打っ坐っている。馬鹿だよ、彼奴は」
「しかしお父さんより多いんでしょう?」
「いや、一緒に徴兵検査を受けたんだから、同じか、精々一つ上だ。三つなんて違う理由はない」
「それじゃ上座へ坐った言訳でしょう?」
「そんな殊勝らしい人間じゃない。慾の皮が突っ張っているから、取るものなら、年でも余計に取ろうって料簡だろう」
「まさか。ハッハヽヽ」
と玉男さんは笑ったが、天竺屋とは相変らず反りが合わないようだった。
「天竺屋といえば、悌四郎君が帰っているようですね」
と正晴君は先刻からそれを考えていた。
「然うかい?」
「新聞に出ていましたよ」
「時々出張があって寄るようだ。家へもいつか寄ってくれた」
「然うですってね」
「親に似ない心掛の善い子だよ」
「はあ」
「天竺屋は悌四郎さんが大の自慢だ。三井物産だから、資本金が五千万円だなんて、自分が持ってでもいるようなことを言っている」
「悌四郎君は堅いですから、受けが好いようです」