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てつのしょじょ

鉄の処女

大倉 燁子

「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 42 页

青空文庫

その当時調査した処では、サーカスの奇術に出ている一座の花形で、亭主はあるにはあるがお金で何とでも解決のつく女だったんです。ところがその女が図々しくも奥様を訪問してね、かなりまとまったお金を取ったんです。勿論日本を去るという条件でね、そしてシンガポールへ行ったということになっているんですが、それは表面で、実際は内地にうろついているらしいので、奥様は私に監視していてくれと云われるのですが、どのサーカスにいるのか分らないんでね」

S夫人はそう云いながら、机の引出しから小さな写真を出して見せてくれた。

「余り別嬪じゃございませんね」

私は写真を返しながら云った。

「処が男の眼にはどこかいいところがあるんでしょう。この女には随分悩まされて非道いめにあった人が沢山あるんですよ」

夫人は写真を大切そうに納ってから言葉をつづけた。

「伯爵夫人を訪問してお金を受取ってから、その女は急に気持が変ったらしいんですよ。つまり夫人が余り美しかったのと、想像以上に豪奢な生活振りだったのとで、嫉ましくもなり、一方ではお金で外国へ追っぱらわれるというような僻みも出たんでしょう。『私はこうして旅から旅を渡り歩いて日を暮す女ですが、これでも亭主持ちなんです。