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てつのしょじょ
鉄の処女
大倉 燁子
「踊る影絵」柳香書院、1935(昭和10)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 20,706 字 · 42 页
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それは幼少の頃からの許嫁だった従妹の智恵子の事でした。
智恵子はどうしたろう。と思うのですが、こんなすれっからしになった私ですのに、智恵子の事だけはどういうものか耻しくって、伯父にもその消息を訊けませんでした。
夢のように十年が過ぎました。
伯父は脳溢血で突然、遺言状も残さずに死にました。私の相続はまだ正式になってはいませんでした。遺産は全部妻の所有となり、妻はあと片附けをすっかりすませると、故郷のイタリーへ帰って往ってしまいました。そして私はまるではだかで、ジョホールにたった一人取り残されてしまったのです。
それからの私の生活は、お話にも何もならない、惨憺たるものでした。
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何年かまた経ちました。
ある時あちらの新聞を広げて何気なく見て居りますと、重要会議で巴里へ行く一行の中に弟の名を発見しました。私は急に懐しくなり、何んとかして逢いたいと思い、いろいろと金の工面をして、シンガポールへ出て来て、日本人会の人を通し、弟に面会を求めたのでしたが、会う機会さえ与えられませんでした。それどころか、誰も私の申すことなど信じてくれずてんで相手にもならないのです、彼の実兄だと主張する私をただ蔑んだ眼で見て笑うばかりでした。