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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

を見ずに聴いていると、男か女かわからないほどの凄まじいものです。

「ところで、きょう両国の小屋が閉ねたのは何刻ごろだ」

「御法通り酉刻(六時)そこそこでございました」

「それから、お前は真っ直ぐに帰ったのか」

「ヘエ、真っ直ぐに帰って、ひとふろ浴びて、一本つけさせたところへ、親分方のおいでで」

五郎八はそういって、薄寒そうに浴衣のえりをかき合せるのでした。酔いもふろの温もりもさめてしまいそうです。

「お前さん」

女房のお六はそれを察したか、後ろからどてらを着せかけました。

「ところで、金沢町の近江屋半兵衛を知っているだろうな」

平次は話題を変えました。相手の明石五郎八は、調子が滑らかで滅法人触りのよい癖に、どこかに要領をつかませない、したたかなところがあるので、平次はいろいろ攻め手を考えては、こう捜りを入れてみたのです。

「ヘエ、よく存じております。お気の毒なこと、非業の最期を遂げたそうで」

非業の最期――という浄るり仕込みらしい言葉が、妙に耳立ちます。

「お前とは、どんな掛り合いがあったんだ」

「三年前府中で興行している時、土地の顔役といざこざが出来、私の命も危ないという瀬戸際に立った時、あの近江屋の半兵衛さんに助けてもらいました。