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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

少し酔ってはいるが、至って元気そうで、女房の着せてくれたどてらに手を通すときも何んのさわりもなかったのを見たのです。

「四十肩とか五十肩とかいうんだそうで、こう腕が痛くちゃ、軽業稼業は上がったりだといっておりました」

「とんだ邪魔をしたな、それじゃ寝酒の方を続けてくれ」

平次はこんなことで小屋の調べに見きりをつけたのです。

裏木戸を出て少し行くと、関所のような路地の外にあやし気な呑み屋が二軒、向い合って客を呼んでおります。

「八、こんな家はお前の方が顔が通るだろう。きょうの未刻(二時)から申刻(四時)までの間に、小屋から出て行った者はないか、きいてみてくれ、――おどかしちゃいけないよ」

「ヘエ」

心得て飛んで行った八五郎は、二軒の呑み屋ののれんの中へ首を突っ込んで、土地の名物の首の白い女と、暫らく何やらふざけておりましたが、やがてニヤニヤしながら出て来ました。

「五郎八は小屋から出なかったそうですよ」

「だれが五郎八の事をきいたんだ」

「ヘエ、あっしはまた五郎八がここから脱け出して、谷中の塔へ行ったのかと思いましたよ」

「五郎八が出なくて誰が出たんだ」

「あの女房のお六が未刻(二時)過ぎに一人で出て行ったそうで、――ここ二軒の呑み屋が路地の口を挾んでお互いに見張っているでしょう。