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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
「――」
「これがもとの配偶の大橋伝中に知れたが最後、私は一刻も半刻も無事には生きていられません。――あの人はどんなにこわい人間か、親分もよく御存じのはず」
「――」
「命がけの仕事をして、親分に喜んで頂くのは、何のためでしょう、親分」
お銀の手はソッと平次の膝に、そして斜下から、うるんだ眼が沁々と見上げるのでした。
揺れる前髪へ、ほの白く霞む額、そして燃える瞳と、真紅に熟れた唇の前に、平次は眼をつぶって寂然と腕を拱ぬいているのでした。
「――」
それは大きな誘惑でした。
「ね、親分、私はどうすれば宜いのでしょう。このまま黙って、配偶の腕の中へ帰ったものでしょうか。それとも親分の手引きをして、二万両の金をお上に引渡し、私は明日という陽の目も見ずに、蟲のように殺されて行ったものでしょうか」
「――」
女の体温に薫蒸された香料が、フンワリと平次の身体を包んだと思うと、お銀は立ち上がって中腰になったまま、平次の肩に柔々ともたれているのでした。
それは素晴らしい媚態でした。が平次はまだ腕を組んだまま、禅定に入ったように、固く眼を閉じております。
「親分さん、――私はもう」