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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控

野村 胡堂

227 怪盗系図

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页

青空文庫

「――」

八五郎は今更感に堪えて聴いております。お南奉行所の記録に残っている、一年前の宇津の谷峠の出来事を平次は朝の茶に唇を潤おしながら、反芻するように続けるのでした。

「曲者はその前から街道筋を荒していた斑男の六人組で、一万二千両の金は、多分姿を変えて、酒か米の荷に紛れて江戸へ入ったことだろう」

「その時分、江戸の町方へもお触れがまわりましたね。斑組六人男の巣を突き留めたものには十両ずつ、召捕った者には一人について百両ずつの褒美が尾張様から出ることになったと――」

「欲張ったことは感心に忘れないんだね」

「今でも、その褒美は出るでしょうか」

「相手は御三家の筆頭、六十一万九千石の大々名だ、あれは冗談であった――などとは言うまい、首尾よく六人男斑組の残党四人を縛って、四百両の褒美を八五郎が一人占めにしてみるか」

「ヘッ、悪くありませんね」

「その中から、樽拾いの小僧の姉――その何んとか言う新造のところへ、二朱ばかり香奠を持って行く――」

「そんなケチなことはしませんよ。香奠に半分はずんであとは夏の物を出して、叔母さんに小遣をやって、親分に一升買って来て」

「おれの分は辞退しようよ、後が怖いから」