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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控
野村 胡堂
227 怪盗系図
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 157,440 字 · 313 页
「お前は?」
平次は死骸から顔を挙げました。隣り町に住んで居て知らない筈はないのですが、近江屋が此処で金貸しを始めたのは、ツイ半年ほど前のことで、番頭の宇八とは、往来ですれ違うか、湯屋で顔を合せる外には、口をきき合ったこともなかったのです。
「奉公人の宇八でございます。――大変なことで」
落着いた調子で、顔色も変えず、眉も動かしませんが、膝に置いた手がわずかに顫えるのを、平次は見のがす筈もありません。
「何処へ行って来たのだ」
「昼過ぎから、主人の申し付けで、取り立てに芝をひとまわりして来ました」
「何処をまわったのだ。行った先の名前は」
「巴町の御浪人で大橋伝中様、宇田川町の呉服屋で相模屋清兵衛さん、芝口二丁目の棟梁で、喜之助親方――それだけでござります」
「晩飯は? 何処でやった」
「喜之助親方のところでごちそうになりました。お酒まで出て」
宇八は自分の頬に手などを当てるのです。
「集めた金は?」
「二月は不景気で、あまり集りません。三軒とも利子だけで勘弁してくれということで、ほんの七、八両取っただけでございますが」
平次の気色の厳しいのにおされたものか、宇八は懐中から財布を出して、中味をザクザク鳴らしたりしております。