轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ながやてんいちぼう
長屋天一坊
山本 周五郎
「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 页
「これでみるに、やっぱり、世の中にはどんな人間がそれとなく、いるかもしれない理屈だなあ」
されば、と、これは心の中で考えたことであるが、自分の持ち長屋に住む連中のなかにも、叩いてみれば相当の埃の出る者もいるかもしれない。まさか冗談でなく、将軍家とまではゆかずとも、どこかの大名の御落胤くらいは出て来るかもわからない。
「これは充分に疑ぐってみなければならない、現にこの俺がいい証拠じゃあないか、とすれば、誰にもそこは断言できない理屈だ」
そしてもしも、と、これも心の中で考えたのであるが、もしもそういう人格がいたとして、それが俺の持ち長屋から発見されたとなればどうなるか。
そのときは現に在るところの系図がものを云うではないか、佐野源左衛門の後裔が歴として繩屋吾助である、とすればどんなに絶大なことになるか。
「これはうかつにしてはいられない、こんな独り言など云っているばあいではない」
こう独り言を云って、吾助は早速長屋住人の身許調査にとりかかったのである。
長屋住人にとっては、このことは一つの新しい被害であった。吾助大家はごめんよと入って来る。そうしてまず天一坊事件に就いての注意を喚起し、家には系図、名物道具には伝来書、書画骨董には箱書、刀剣には折紙なるものの存在を説き、さて自分のゆゆしきところの系図をそこへ拡げて