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ながやてんいちぼう

長屋天一坊

山本 周五郎

「講談雑誌」博文館、1950(昭和25)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 29,453 字 · 57 页

青空文庫

莫大な出世であるし、かのごうつく並びに臼においても」

「そいつだ、まちげえなし」銀太がまるっこい膝頭を叩いた、「禿のよまいごととぴったり合う、そいつですよ先生」

列席の同志はみな頷き、声々に不識斎先生の卦を肯定した。

そこで銀太は早速のところ、対策の討議に移ることを提案し、どうしたら天一坊の憑き物をおとすことができるかに就いて、腹蔵なき意見を挑発したのである。各位は首を捻り、腕組みをし、貧乏ゆすりをし、俄かに咳をし鼻をかみしめて、それぞれ腹蔵なく妙案を開陳したが、やがて口の重い金太が、

「うん、……そのことで考げえたもんだったが」そう重々しく云って銀太を見た、「あのう、それ、あれよ、……神田の柳原の土堤に、うす馬鹿の乞食がいたもんだろう」

「青瓢箪みてえなあの若造か」

「うん、あいつだ、……あいつでやれねえかと、いま考げえたんだったんだが」

「だっておめえ、あのうす馬鹿をどうするんだ」

「うん、それなんだが、あれをだな、なんとかくふうして、天一坊みてえに仕立ててだ、そうして大家に押っ付けたらどうか」

「あのうす馬鹿の乞食をか」

「あのうす馬鹿の乞食をよ」金太は右足の拇指を静かに動かした、「あいつによ、うん、お墨付とか、短刀とか、まあそういった、……こいつはありきたりの物で、なんとかうまくまじなってよ、こんな物を持ったこんな