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ながさきのかね

長崎の鐘

永井 隆

「長崎の鐘」日比谷出版、1949(昭和24)年1月30日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 65,109 字 · 131 页

青空文庫

友の名を呼ぶ声、親を求める声、聞き覚えのある声、大勢声を合わせての叫び。しかし私たちはもう七人の仲間を死んだものと諦めていた。皮膚科の崎田君は大腿骨折で身動きもかなわず、今壕の中に寝せてあるという。藤本君は講堂の床下から九死に一生を得て、杖をつきつき、さっきここを過ぎたので自宅へ帰らせた。あとは辻田君と片岡の蛸ちゃんと山下君ら五人の看護婦である。彼らは生命さえ残っておれば、どんなにしてでも教室へ帰ってくる人々であった。たとい霊魂がまさに肉体を離れんとしてただ髪の毛の先でつながっているほどの瀕死の重傷でも、必ず私たちのところまではって来て、それから死ぬはずの仲間であり、それほど堅い私たちの団結だった。もう八時間も経過して、姿を見せぬが故に、あの人々は即死したにちがいないのである。私たちはじっと黙祷をささげていた。

のっそりと裸の大男があらわれた。

「おっ、永井先生。見つけたぞ」

「あら、清水先生。生きていましたか」

「わし一人じゃ」どたりと尻餅をついた。手についてきた焼け残りの角材がからから音を立てて倒れた。ふうふう肩で息をしている像は、まさに傷つける闘牛か。