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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

老婆は白髪の上の処に、

(ようゆうばば術を施すのところ)

おかしな口調です――(術を施すのところ)老婆はたちまち見て取った。絵も覿面だから解りました。が、その(ようゆう)が分りません、かなで書いただけで、それは三十年余りも経った、いまにおいてどういう意味だかわかりません。が……さて続いた絵なんです、もっとも、めくるとすぐに細かい字で、ぎっしり二三枚かき込んでありましたけれども、川柳にもありましょう、うまい事をいった、(読本は絵のとこが出て子に取られ)少年はきれいな婦の容易ならない身の上が案じられますから、あとを性急に開ける、とどうです。

立った乱れ姿で縛られたのが、今度は崩れたように腰をついて、膝を折りかがめに、片足を、ぐったりと、濡縁に髪を流し、白く蹴出した、その一本のふくら脛の膝から下に、むくむくと犬だか猫だか浅間しい毛が生えて、まだ女のままの指尖が獣の鰭爪に屈まって縮んでいる。

――(ようゆう)ですね、老婆は、今度は竹箆を口に啣えて、片手で瓶の蓋を圧え、片手で「封」という紙きれを、蓋の合せ目へ禁しながら、ニヤリとしている。

その、老婆に、形も面も、どことなく肖ているのですよ。