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ゆきやなぎ
雪柳
泉 鏡花
「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页
それを、柳に濡色な艶々と黒いのを、みしと蹈んで、突立ったのが、あと足で蹴退けると斉しく、
「誰だ、何が、誰だとは人間に向うてよういうた、にい。畜生のくせにして、おのれ。」
とその袴で、のしのしと出て坐った。黒の被布で、鈍色の単衣の白襟で、窪んだ目をいた。
「おお見た処が、まだ面相は人間じゃに、手は、足は、指なぞどうぞに、もう犬猫の毛が生えてはせぬか。どれ、掌など、ちょっと見せやれ。に、どれ、どれ。」
私は引払って手を引いた。幻に見えるのは、例の黒い瓶の煉薬です。――その向った柱には、どんな姿が、どんなありさまになっていたとお思いになります、これにかかっては堪らない。汚らわしい。
「何をするんだ。触っちゃ不可い。」
「触ったら嬉しかろ、難有いとおもいなされ、そりゃ犬猫に、お手々という処じゃがや。」
「犬猫、畜生とは何だ。口が過ぎよう。――間淵の妹。」
「うん、小山弥作――何で尼の口が過ぎる。畜生、というたが悪いと思うか。くろよ、くろよ、ぶちよ、ぶちよ、うふふ、うふふ。」
と、いやらしく口を割って、黄色い歯で笑ったあとを一睨み睨んだ。目が光って、
「この牡。」
「牡。