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ゆきやなぎ

雪柳

泉 鏡花

「中央公論 第五十二年第十三號」1937(昭和12)年12月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 45,054 字 · 90 页

青空文庫

」

「……いやです、あなたが獅子でも、象でも、私は女で、影にも添っていたいんです。」

――こんなに、いとしい思いをした覚えはない。

「よし。」

私は大胡坐で胸を開けた。

「尼さん、療治をうけよう。」

――火は熱いか、熱くないか、とおっしゃるんですか。いや、それは……

何だといって、六つずつ十二の煙が、群りまとい這いまつわる、附木の硫黄は、火の車で、鉄の鍋の中に、豆府と菎蒻がぐらぐらと煮える……申しますまい。口で言うだけでも、お冬さんを、我が手で苛め虐げるに斉しいんですから、ただ幻に見て、爪の尖まで、青くなった時に、お冬さんが一言幽にいいました。

「草葉の、露に、青い、蛍が、見えますわ。」

と手術でもうけたあとのように、やっと立って、それでも、だてじめの上へ帯を抱えたなりに、膝をなやして、戸を出る私の背に縋つて、送ろうとするのを、

「慎しみませい、灸の忌じゃ、男の傍へ寄ってもならん。」

と、袴をはだけて、立ちふさがって突きのけた。

「そこで、戸を膝行って出た私ですが、ふらふらと外へ出たのは一枚の開戸口で。――これが開いたのを、さきには一本松の幹だと思った。見ると、小さな露台があって、瀬戸の大鉢に松が植っています。