轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

かぜ

風

壺井 栄

「文芸」1954(昭和29)年11月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 38,702 字 · 78 页

青空文庫

寒い夜だった。修造のために蛤鍋の用意をして、茂緒は待っていた。いつまでたっても、修造は帰ってこなかった。しかし、そんなことはしょっちゅうなので、気にもかけず茂緒は、電灯を低くさげて縫物をしていた。夜ふけた路地に乱れた足音がして、遅いテンポで近づいてくる。ひとりではなかった。だが、玄関の前でとまったのに気づくと、茂緒はさっと立って、あかりをつけた。Hと、もう一人若い詩人のKがひとりの男を両腕から抱えるようにして横むけに入ってきた。男は両腕をHとKの肩にかけている。酔っぱらいとは様子がちがっていた。

「どうしましたの。」

まん中の男が誰とも気づかずにいったが、だれも答えなかった。しかし茂緒は、男が玄関の式台に、割れもののようにして掛けさせられたとき、それが修造だと分かった。声が出なかった。彼女は、はだしのまま飛びおりて、修造の靴のひもを解いた。見あげると、彼の顔は彼とも思えぬほど形を変えている。ものもいえないらしい。Hたちも何にも説明せずに、もっそりと帰っていった。修造ははじめてうめき声をあげた。明かるい座敷に寝かせると、彼の顔はいびつな五角か七角のように見えた。