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ひだのかいだん

飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選

岡本 綺堂

岡本綺堂『飛騨の怪談 新編 綺堂怪奇名作選』。同一底本的分册已合并为一书。收入:飛騨の怪談、影、画工と幽霊。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 130,271 字 · 263 页

青空文庫

見ればお葉は嫣然して、相変らず小手招ぎをしている。市郎は黙って霎時睨んでいた。

「何故そんな怖い顔をして被在るの。妾、※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)じゃなくってよ。妾の罰で、貴下は※(「けものへん+操のつくり」、第4水準2-80-51)に酷い目に逢ったと云うじゃアありませんか。」

お葉は首を掉るようにして、はははははと高く笑った。彼女は酒の強い方であったが、昨夜以来飲み明かした地酒の酔は漸次に発したと見えて、今は微酔どころでない。

「老爺や。其女を追っ攘って了え。」と、市郎は声を暴くして云った。

「お前は酔っている様だ。早く帰らッせえよ。」と、七兵衛は箒を輟めて顧った。

「大きにお世話よ。後生だから若旦那をここまで呼んで来て頂戴。」

「そんなこと云わねえで、帰らッせえと云うのに……。」

「どうしても呼んで呉れないの。」

「不可ねえと云ったら……。」

この押問答の中に、市郎は奥へつかつかと入って了った。

「若旦那……市郎さん……。」

お葉も続いて内へ入ろうとするので、七兵衛は驚いた。

「どこへ行くのだ。」

「若旦那に逢わして下さいよ。」

「馬鹿云うものでねえ。