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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
「その話ならむし返すことはない」と十太夫が云った、「三年まえに相談しあって、ちゃんときまりがついている」
「あたしはまだ娘のままよ、なんのきまりがついたんですか」
「三人の気持が変るのを待とう、ということだったろう、だが肝心な点は一つ、おみ公が誰を選ぶ気持になるかということだ」
「卑怯だわ」とおみのは云い返した、「あたしは二人とも好きだし、この気持は変りようがないんですもの、こういうことは男の方のほうできめるのが本当じゃありませんか」
「おれはみの公が欲しい」と十太夫がまじめに云った、「けれども土田を押しのけてまで、自分のものにしようとは思わない」
「あなたは」とおみのは土田を見た。
土田はからの盃をじっとみつめていた。十太夫とおみのはそのようすを眺めながら、やや暫く待っていた。
「おい――」と十太夫が云った、「おまえ饒舌り過ぎるぞ、土田」
土田正三郎は十太夫を見て、てれたように頭を下げ「うん」と口の中で声を出した。それまで饒舌り続けていたが、注意をされて口をつぐんだ、というふうにみえた。
「つづめて云えば」と十太夫が云った、「おれが代りにつづめて云えば、土田の考えもおれと同じだということなんだ、つまり彼もまたおれを押しのけてまでおみ公を女房にする気はないんだ」