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しゃべりすぎる

饒舌りすぎる

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页

青空文庫

ので婚期を逸したということだ」

十太夫の口ぶりにはなまなましい感動がこもっていた。彼は安川家へ訪ねてゆき、しづと会って話した。彼女が嫁にゆかなかったのは、主婦代りをしなければならなかったからではなく、土田と十太夫の二人を忘れることができず、そのどちらかでなければ、一生をともにする気になれなかったためである、と告白した。十太夫は続けて安川家へゆき、そのたびにしづと話しあった。安川大蔵はすでに結婚して、二歳になる子供もある。しづは父親や弟の世話をするだけだから、その機会さえあれば、いつ嫁にいってもいい立場であった。これらの事情を話しあっているうちに、しづの気持は十太夫にかたむいてき、十太夫もしだいに心がきまってきた。

「おれは抜け駆けをしたかたちだが、卑怯ではなかったつもりだ」と十太夫は肩を怒らせるような調子で云った、「――会って話すたびに、必ず土田のことを話題にし、むしろ土田を推薦するようにつとめた、けれども、しづの気持は少しも迷うようすがなく、おれとの結婚なら承知すると云った」

十太夫が立停ったので、土田正三郎も足を停めた。昏れかかる空は青ずんで高く、斑に雪の残った河原の向うで、芝野川の流れが静かに瀬音をたてていた。