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しゃべりすぎる

饒舌りすぎる

山本 周五郎

「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页

青空文庫

機会はなかったから、まるでお先まっ暗だった、あんなにまごついたことはないぜ、まったく、まったくまごついたよ、ああ」十太夫は喉で笑った、「ばかばかしい話さ、なんだっておれたちは遊ばなかったんだ」

土田正三郎は当惑したように、片方の肩をむずっと動かした。

「饒舌るな」と十太夫が云った、「なにも理由なんかありやしない、潔癖だとか、志操堅固なんていうものでもない、要するに、その方面にかけては育ちそくないであり怠け者だったんだ、そうだろう」

土田正三郎は考えてみて、そうかな、というふうに首をかしげた。

「そうさ、それだけのことさ、きまってるじゃないか」と十太夫は云った、「土田だって結婚したときにはまごついたろう、おまえは融通がきかないからな、どんなにへどもどしたかおれには見えるようだぜ」

土田は静かに「知ってたよ」と云った。

「知ってたって」十太夫は不審そうに問い返した、「――なにを知ってたんだ」

「小間使から教えられたんだ」と土田はゆっくりと云った、「十二のとしにさ」

十太夫の眼が大きくなり、土田を睨んだまま眼球がとびだしそうになった。

「こま」と十太夫は吃った、「――小間使に教えられたって」