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しゃべりすぎる
饒舌りすぎる
山本 周五郎
「オール読物」文藝春秋新社、1962(昭和37)年2月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 27,957 字 · 55 页
土田正三郎は黙っていた。
「よくわかりました」しづはそっとじぎをして云った、「これでわたくしの気持もおちつきます、決して他言はいたしません、――有難うございました」
土田は会釈をしてそこを去った。
彼の顔には、しづとは反対に、明るく挑戦的な微笑がうかんでいた。眼に見えない誰かを空に描いて、そのものに得意なめまぜでもするような、満足げな微笑であった。
「どうだ十太夫、みごとなものだろう」――寺の山門を出ると、土田はそう云いだした、「おれがみまいにゆかなかったのは、あの人のためさ、いつかおまえは云ったな、おれたちは二人いっしょにいると一人になってしまう、おれたちはいつも同じ娘に恋してしまうし、娘のほうでもどっちが好きか判別がつかなくなる、奇妙な、有り得ないことのようだが、事実がそのとおりだったことは、おれとおまえがよく知っていた」
「死んでしまったいまは、おまえにも見とおしだろう」と土田は続けた、「おれが枡平のおみのと結婚しなかったのは、おみのが拍子ぬけしたのではなく、おれのほうで興味がなくなったからだ、十太夫といっしょでなければ、これっぽっちも興味がわかないんだ、これが本当のことなんだ」