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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
ていたところ。
(ちょいと伺いとう存じますが、)
(これは何でござりまする、)と山国の人などは殊に出家と見ると丁寧にいってくれる。
(いえ、お伺い申しますまでもございませんが、道はやっぱりこれを素直に参るのでございましょうな。)
(松本へ行かっしゃる? ああああ本道じゃ、何ね、この間の梅雨に水が出て、とてつもない川さ出来たでがすよ。)
(まだずっとどこまでもこの水でございましょうか。)
(何のお前様、見たばかりじゃ、訳はござりませぬ、水になったのは向うのあの藪までで、後はやっぱりこれと同一道筋で山までは荷車が並んで通るでがす。藪のあるのは旧大きいお邸の医者様の跡でな、ここいらはこれでも一ツの村でがした、十三年前の大水の時、から一面に野良になりましたよ、人死もいけえこと。ご坊様歩行きながらお念仏でも唱えてやってくれさっしゃい。)と問わぬことまで深切に話します。それでよく仔細が解って確になりはなったけれども、現に一人踏迷った者がある。
(こちらの道はこりゃどこへ行くので、)といって売薬の入った左手の坂を尋ねて見た。
(はい、これは五十年ばかり前までは人が歩行いた旧道でがす。