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こうやひじり
高野聖
泉 鏡花
「新小説 第五年第三巻」春陽堂、1900(明治33)年2月1日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 36,025 字 · 71 页
品物は侘しいが、なかなかのお手料理、餓えてはいるし、冥加至極なお給仕、盆を膝に構えてその上に肱をついて、頬を支えながら、嬉しそうに見ていたわ。
縁側に居た白痴は誰も取合ぬ徒然に堪えられなくなったものか、ぐたぐたと膝行出して、婦人の傍へその便々たる腹を持って来たが、崩れたように胡坐して、しきりにこう我が膳を視めて、指をした。
(うううう、うううう。)
(何でございますね、あとでお食んなさい、お客様じゃあありませんか。)
白痴は情ない顔をして口を曲めながら頭を掉った。
(厭? しょうがありませんね、それじゃご一所に召しあがれ。貴僧、ご免を蒙りますよ。)
私は思わず箸を置いて、
(さあどうぞお構いなく、とんだご雑作を頂きます。)
(いえ、何の貴僧。お前さん後ほどに私と一所にお食べなさればいいのに。困った人でございますよ。)とそらさぬ愛想、手早くおなじような膳を拵えてならべて出した。
飯のつけようも効々しい女房ぶり、しかも何となく奥床しい、上品な、高家の風がある。
白痴はどんよりした目をあげて膳の上を睨めていたが、
(あれを、ああ、ああ、あれ。)といってきょろきょろと四辺をす。