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たましいのあえぎ
魂の喘ぎ
大倉 燁子
「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,081 字 · 20 页
公正侯の思いつきであろう、その時代の当主の使用した物品をそれぞれの前に並べてあった。
先代侯爵と夫人の前には大きな寝観音が安置され、螺鈿蒔絵の経机の上には青磁の香炉をのせて沈香を焚き、細々と立ちのぼる煙はあたりの空気を、清浄なものに感じさせていた。その傍には高蒔絵の御厨子、蝶貝入りの書棚、梨地定紋ちらしの文机等が極めて体裁よく置きつけてあった。どれを見ても欲しいものばかり、侯爵が特に指名した人に限るとしたのは、商売人の立ち入るのを防ぐためだったろうと一同はうなずいた。
「あら、まあ、何んて大きな観音様でしょう」とびっくりしたような甲高い声がした。それは二三人の貴夫人連であった。
「お立派な観音様、これはね、先代様がシャム国へ御派遣になった時、有名なワット・サーケーという寺院の御住職様から御拝領になったものですよ、あんまり大きいので平常は菱井信託の地下二階の宝物庫にお預けになっていたのを特にこの度お取り寄せになったんです」
と同族の侯爵夫人が云った。
「このお胴の中でお昼寝位出来そうですわ」
「でも、中はがらん洞ではないでしょう。金だか、銀だか、銅だか知らないけれど、いずれむくでしょうから」