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たましいのあえぎ

魂の喘ぎ

大倉 燁子

「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,081 字 · 20 页

青空文庫

「金や銀なら今頃まで残っていませんわよ。供出させられてますから、オホホホホホ」

誰でも一度はこの寝観音に眼をとめるらしく婦人連が次の間へ去ってしまうと、どかどかと四五人の紳士連が周囲を取り巻いていた。頃あいを見て、

「皆様、どうぞ御入札をお願いいたします」

と執事が大きな声を張り上げた。

入札せよと云われても素人ばかりなので、価格がわからない、金額の書きようがないという人が多かった。それでも大騒ぎしてどうやら入札が終った。

「粗茶を差上げますから、御一同様がた、どうぞこちらへ」と来客を食堂へ案内した。

各自の前に紅茶と菓子が運ばれた時、始めて藤原公正が羽織袴で姿を見せた。彼は威儀を正して一通りの挨拶をすませると、

「招待状にもちょっと申上げておきましたように今日は当家の秘密を皆様にお話申上げたいと思います」と前置きして、

「已に御承知の事でしょうが、話の順序として一応申上げます。私共夫婦は他家から養子に参った者、当家は公高が継ぐはずでありましたが不幸にも十一才で行方不明になり、彼の生死も分らないままで十数年過ぎてしまいました。当時皆様方の間では昔風に神かくしだろうとか、人浚いの手に渡って奴隷にでもなっているだろうとか、種々の取り沙汰をされていたのですが、結局分らずじまいで今日に至りました。