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たましいのあえぎ

魂の喘ぎ

大倉 燁子

「宝石 二巻一〇号」1947(昭和22)年11月、12月合併号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 10,081 字 · 20 页

青空文庫

しかし機嫌のよい時は実に如才のない、頓智のある気の利いた子でした。

小学校へ入ると直ぐ級長になり、明朗で頭が鋭いと先生も褒めて下さる。悧口だ、美しい子だと親類中の褒めものになり、そのために私への風当りがすっかり違ってきたのは有難い事でした。ひと様から云われなくとも、子を見ることは親が一番知っています。私は密かに同族間を見廻わしましたが公高の右へ出る男の子は一人もありません。私は得息でした。栴檀は双葉より香ばしいといいますが、ほんとに公高は輝いていて、生れながらにして人の長となる品格を備えています。彼のおかげで平民の娘の価値も上り、危く見えた私の地位も段々ゆるがぬものになって行きました。

ある日、私がお湯殿から衣裳部屋へ入ろうとすると入れ違いに、小さい者の影がお縁側の方へ走るのを見ました、公高でした。どうして母の衣裳部屋へ入っていたのかと何心なく見ると、ずらりと並べてある箪笥の一つの抽斗が開いていて腕時計のケースがありません。それはダイヤ入りで一番大切にしているもの、私は何という事なしに胸を突かれました。墨塗りの小物入れにも触れたらしく小さい手形がついている、泥に汚れた手で抽斗を開けたのでしょう。