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かんしょうりょくなくしてしゅうじするなかれ

魯山人書論

北大路 魯山人

北大路魯山人『魯山人書論』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鑑賞力なくして習字する勿れ、芸術的な書と非芸術的な書、習書要訣、書道習学の道、書道と茶道、書道を誤らせる書道奨励会、美術芸術としての生命の書道、よい書とうまい書、遠州の墨蹟、現代能書批評、高橋箒庵氏の書道観、陶磁印六顆を紹介する、能書を語る、墨蹟より見たる明治大正の文士、魅力と親しみと美に優れた良寛の書、牧渓の書の妙諦、柳宗悦氏の筆蹟を通じその人を見る、良寛の書。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,639 字 · 175 页

青空文庫

しかるに、これは必ずしも枢密顧問官の老夫人独りに限られた偏見ではなかった。というのは、その後またこんなことがあった。こんどは相手が世間不見の一婦人ではなく、東京のさる大きな保険会社の社長二人である。たまたま趣味談にふけっている中に、話題が書道に及ぶや、その一人が「ところで書では今誰が一番うまいか」と僕に質問して来た。そこで何気なく「うまいといっても色々だが、まあ能書の随一は徳川家達公だろうね」と、日頃の所信だけにあっさり答えたものである。すると彼等は意外な返答を聞くものかなという面持ちをして両君なかなか承知しない。「あんな書なんか、てんで問題にならない。それを現代能書の随一だなんて、君は人を馬鹿にしているね」という調子で、むしろ僕の返事の真面目さを疑ってしまうありさまだった。それから、僕も開き直って、徳川公の書の能書なることをあれこれと様々に説明したが、遂に彼等を承服させ得ず、百万言の説法も徒労に終ったばかりか、遂には、君の見方も当てにならないね、という風で、そのためこちらまで不信任になった。

一度ならず再度まで、徳川公の書については、こういう経験をなめたので、これは案外こういう程度の人が世に多いであろうということを僕は考えざるを得ない。