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かんしょうりょくなくしてしゅうじするなかれ
魯山人書論
北大路 魯山人
北大路魯山人『魯山人書論』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鑑賞力なくして習字する勿れ、芸術的な書と非芸術的な書、習書要訣、書道習学の道、書道と茶道、書道を誤らせる書道奨励会、美術芸術としての生命の書道、よい書とうまい書、遠州の墨蹟、現代能書批評、高橋箒庵氏の書道観、陶磁印六顆を紹介する、能書を語る、墨蹟より見たる明治大正の文士、魅力と親しみと美に優れた良寛の書、牧渓の書の妙諦、柳宗悦氏の筆蹟を通じその人を見る、良寛の書。
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 84,639 字 · 175 页
そこで昭和十一年初夏の書、すなわち僅々一、二カ月前の、総理大臣としての広田氏から生まれ出た「浩々居」は著しき心境の動きによって(?)断然曩の「鬱々含晩翠」とは人間を異にし、書能を一変してしまった。貫禄において、一段や二段の変り方ではないこととなった。書格は急遽一躍数倍した。もしそれ、そんじょそこらの書家輩にこれを評さしむれば、広田さんも総理大臣になって忙しいせいだろう、惜しむらくはお手が下った、外務大臣時代の書こそ実に容易ならぬ旨さがあったものだというかも知れない。そう考えられるまでに、広田氏の書は変化好転の見るべきものが生まれた。
「鬱々含晩翠」の書は巧みに成就してはいるものの、書法筆法の慣習に縛せらるるものであって、独自の見識と信念に欠くるものがある。従って、筆の動きは腫物に触るが如く戦々兢々として、断乎自我そのものを発揮し得ない憾みを有する。
しかるにだ、最近揮われた所の「浩々居」はというと、これはまた無人の境を行くが如く何者に対する恐れ気もなく、ようやく俺は俺だという信念を以て、正々堂々悠々と筆が動いたことは見逃し得ない。真の書道が望むところの信念の書が生まれて来たのだ。