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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

お吉とお米とは、かつて久しぶりに、九条の渡舟で会ったことがある。その時のお吉は、消息の絶えた万吉の身を案じて、四貫島の妙見へ、無難を祈りに行った帰るさであった。

お互いに、女同士の愚痴をいったり慰めあったりして別れたお米が、フッと大阪から姿を消したのは、それ以来のことである。

万吉と夫婦になる前は、川長の座敷で仲居をしていた縁もあって、お吉はその騒ぎの折も、店の者とひとつになってお米の行方を探したが、どうしても知れなかった。

そのお米が――今何げなく眺めた阿波座堀の艀の中に、その頃より肉づきさえよくなって、仲間態の男と話を交わしていたので、お吉は、驚きのあまり、ジッと、見定めるという余裕もなく、いきなり声をかけたのである。

けれど、先の女は、日傘の下に姿をすぼめて、いかにも素気なく聞き流して行ってしまった。お米様ならあんなことをするいわれがない。やはり、自分の錯覚であったかしらと、お吉は茫然と思いなおした。

「そういえば、仲間らしい男もいたが、川長のお嬢さんが、そんな者を供につれて歩いているのも妙な話……。とすると、何かにつけて、同じ年頃の女をみると、もしや、もしや? と思う私の気のせいだったんだね。