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なるとひちょう

鳴門秘帖(三)

吉川 英治

吉川英治『鳴門秘帖(三)』。同一底本的分册已合并为一书。收入:鳴門秘帖、鳴門秘帖、鳴門秘帖。

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 261,216 字 · 521 页

青空文庫

夜になっても下城しなかった。

で――周馬とお十夜は町へ出かけた。

「踊らないか、周馬」

踊りの輪を眺めながらお十夜が冗談にいうと、周馬は羨ましそうに。

「踊りたいな。踊りたいよ、拙者も」

「踊ったらいいじゃねえか、遠慮はいらない」

「だが、踊れない……」

「でたらめでいいのさ、あの中へ飛びこめば、ひとりでに踊れてくる」

「手振のことじゃない。あの気持になりきれないというのだ。お十夜、お前、踊ってみる気になれるか」

「そうだな……」と考える。

「踊れまい」

「ばかばかしいのが先に立って」

「実はそこに、自分を裸体にさせない気持が潜んでいるからさ。見たまえ、夢中になって踊っている人間は皆ムキ出しの人間だ――」

と、周馬はニキビを押しながら、踊りの流れを軒下へよけて、

「遠い昔は、踊りたいと思えば、いつでも踊るのが人間の当り前な動作で、それを、賢そうな顔をして、冷視している人間なぞはいなかったろうと思うよ」

「そうかな?」

「そうとも、本能だもの」

「くだらねえ講釈、よそうぜ。――踊る阿呆に踊らぬ阿呆、どうせ阿呆なら踊らにゃ損じゃ――って歌っていやがる。なんだか、あてこすられているようだ」