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う
鵜
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页
「父のためによろこべって」
「口では云えないいろいろなことがあるわ、でもお父さまにはわたくしが重荷です」とさだは云った、「わたくしの云うなりになっているようにみえるのも理由があるし、元気でわかわかしくみえるのにも理由があります」
「それを聞こう、その理由というのを聞かせてくれ」
「云えません」さだは首を振った、「夫婦のなかのことは他人には云えません、ただ、三十以上も年下の妻をもっていることが、お父さまのからだにも心にもどんなに重荷であり、どんなに大きな負担だかということを、――三年間いっしょに暮して来たわたくしが、それをいちばんよく知っている、ということだけ申上げます」
「その言葉をそのまま信じろというのか」
「わたくしがいなくなればお父さまはほっとなさいます」
「そしておまえも」小五郎はまたかっとなった、「おまえ自身も、あの男といっしょになってほっとしようというのか」
さだの眼がきらっとし、その唇にまた(あの)微笑がうかんだ。彼女は小五郎の眼をまともにみつめながら云った。
「それがあなたの本音ね」
「なんだって、――」
「それがあなたの本音よ」とさだは云った、「さっきから云っていることはお父さまのためじゃなく、みんなあなた自身のためよ、わたくしを跟けまわしたり、汚らわしい女だときめつけたのはあなたの嫉妬だし、出てゆかない