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う

鵜

山本 周五郎

「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页

青空文庫

「おれの、――」と彼は吃った、「おれのためだって」

「あなたはずっとわたくしにつきまとっていました、自分で父の妻になってくれと頼みながら、わたくしが藤江家に嫁いで来てからも諦めることができない、一日じゅう暇さえあればつきまとっている、お父さまに気づかれてはいけないと思って、それでわたくしこっちへ移ったんです」

「そんなことは嘘だ、おまえのでたらめだ」

「お父さまに気づかれてもいけないし、なにかまちがいでも起こったら取返しがつかないと思ったからです」とさだは云った、「それでもだめ、あなたはやっぱり来る、この控え家へまで、用もないのに三日とおかずいらっしゃる、もういや、もうたくさん、わたくしこの家を出てゆきます」

「藤江の家名や父の面目を潰してもか」

「あなたが初めに、三年まえに」とさだは云った、「お父さまにではなく自分の妻になれと仰しゃっていたら、決してこんなことにはならなかったでしょう、あなたにはそれを云う勇気がなかった、そしてこの場になっても、家名や面目などでわたくしを抑えようとなさる、あなたは卑怯のうえに狡猾だわ」

「云いたいことを云え、だが、――この家からは決して出さないぞ」