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う
鵜
山本 周五郎
「講談倶楽部」博文館、1954(昭和29)年8月号
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 18,733 字 · 38 页
「あの日のおまえはきれいだった」半三郎は水を眺めながら云った、「本当にきれいだったよ、ただこ」
彼の眼がうるみ、声がふるえた。
「おまえあのとき、また明日、――って云ったろう、また明日、あの淵でって云ったじゃないか」彼は眼をつむり、そうして囁いた、「どうして来ないんだ、どこへいってしまったんだ、ただこ、おまえいまどこにいるんだ」
半三郎の持っている竿が撓った。もっと大きく撓い、水面で魚が跳ねた。彼はその撓う竿を持ったまま、頭を垂れた、低く頭を垂れて、そして口の中で囁いた。
「ただこ、――」
水面で魚のはねる大きな水音がした。