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こうちょうのなげき

黄鳥の嘆き

甲賀 三郎

——二川家殺人事件

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 40,792 字 · 82 页

青空文庫

僕は鳥渡意外に思った。といって、細君が妊娠した事を意外に思ったのではない。結婚後十数年経って、初めて子供の出来た例は乏しくないのだから、少しも不思議はない所か、大変目出度いと思うのだが、何故二川がその事を僕に隠したのか、鳥渡解せないのだ。先年あんな事で喧嘩別れになったので、いい悪かったのか、それともその時になって発表して驚かそうというのか、どっちかだろう。道理で中々元気があると思った。

此間会った時に、その事をいって呉れゝば、恰度僕の所も家内が妊娠中で、僕の所は初産ではないけれども、上は亡くなしているから、まア初めて見たいなもので、共に祝い合う事が出来たのに、一体どっちが先に生れるのだろう。

年を繰って見ると、野村が生れた年は父は三十三歳だった。日記にも書いてある通り、上の子が夭折したので、生れて来る子供に対して、父が大へん喜んでいる有様がよく分るので野村は思わず微笑んだ。

次の手記はいよ/\二川重明が生れた時の事で、之で見ると、重行が子供を得た喜びが、野村の父のそれより遙かに勝っていた事が分るのだった。重明の生れたのが、野村より一月ばかり早かった事は、既に野村のよく知っている事だった。