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あさひのよろい

あさひの鎧

国枝 史郎

線上閱讀国枝 史郎《あさひの鎧(あさひのよろい)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 239,520 字 · 475 頁

青空文庫

「フーン」

と陸奥守は鼻を鳴らした。

「男と一緒に忍び込んだのか。……ではその男女もちと怪しいな」

「庭へ引き出し吟味したらどうじゃな」

と、三河入道が口を出した。

「さようさ、それも面白かろう。……権守、そやつらを引き出すようなされ」

間もなく叱咤する声などが、幔幕の背後から聞こえて来、やがて篝火で昼のように明るい、中庭へ四五人の武士に囲まれ、二人の男女が入って来た。

土岐小次郎と浮藻であった。

座中にわかに動揺した。

「なるほどこれは美しい」

「やつれてはおるが素晴らしい美女じゃ」

「売女と異って素人女は、まことに清らかでよいものじゃ」

女たちは女たちで囁き合った。

「よい殿ごぶり」

「光源氏じゃ」

鬼火の姥と範覚とは、小次郎と浮藻とを眼に入れるや、いかにも仰天したように、顔を見合わせ囁き合った。

そうだろう。姥は小次郎の美貌に、修験の道心を失って、叡山裏山の洞窟内での、調伏を仕損じたほどであり、範覚に至っては浮藻のために、気絶して仆れたほどなのだから、

「範覚よ、ありゃア小次郎じゃ」

「姥よ、浮藻じゃ、ありゃア浮藻じゃ!」

この時、陸奥守は座を立って、ツカツカと縁まで歩いて行った。