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あるはいまつのどくはく
ある偃松の独白
中村 清太郎
線上閱讀中村 清太郎《ある偃松の独白(あるはいまつのどくはく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 頁
四 山の子
ことだが、われら草木の祖先は、そのつめたい流動体の背を借りて、大地から大地へ、峰から峰へと、子孫をひろめて行ったのが、今俺たちのこうして、気高く清らかな大地の突端に、楽しく生を営んでおられる、基いをなしたものだとか。
のみならず、現に雪というものは、長い冬の間じゅう我らを、この三千メートルの高空の寒威から護ってくれる、いわば情けの厚い蒲団でもある。そりゃ重いことは、とても重いけれど、このおかげで俺たちは、生命を保って行けるというものだ。それが証拠に、この蒲団がまだ薄いうちとか、風などでそれが引っぱがされた時の、その寒いことといったら……露出した手足は、いくら不死身に近い俺たちでも、しばしば凍傷を起して、それなりなおらずじまい、夏が来ても葉は赤いまま、はては裸の手ん坊で残る、ということになる。そうして見れば、あの雪崩だとて、一概に敵視などしては、相すまぬわけ合いだろう。とは言うものの、恐ろしいことはやはりまったく恐ろしい。
四 山の子
俺はしかし、何という善い星の下に生れたものか。物心ついた時には、この見あげるような大岩さんたちの、身をよせあった間に、根をおろしていた。