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あるはいまつのどくはく

ある偃松の独白

中村 清太郎

線上閱讀中村 清太郎《ある偃松の独白(あるはいまつのどくはく)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 132,905 字 · 262 頁

青空文庫

山雪の幻像 ――雪形の発掘と記録――

夜半、ズシリ、ズシリと重いひびきが天幕の中の旅枕に通うのは、彼らの水を求める足音であろう。それに義蔵老が――出ますよ先生と、じろり私の顔を見ながら言った、池の主の大蛇は、ついにお姿を拝するに至らなかったが。

終日めぼそがさえずり、ガマも住み、蚊が多い。小バイケイ草は、はや水霜に黄ばみ、水辺にい草、唐松草、秋のキリン草などが咲いていた。

ここには定まった名が無いので、地元の人々に望まれるまま、取りあえず「清見ガ原」と「穂影ノ池」の名を選んだ。願わくば、この珍らしい清浄境を、できるだけそのままに保たれるよう、後遊の方々の愛護を切望して止まない。

(昭和三十三年春)

山雪の幻像

――雪形の発掘と記録――

五月から六月にかけて、高根の雪がとけるにしたがい、山肌がだんだん現われてくる。その山肌と雪とで作る斑紋が、見ようでは種々な物の形、たとえば動物や人間の姿などにも見えるものだ。その形は、山肌が雪の中に黒く現わす場合と、山肌に囲まれた雪が白く描き出すのとある。そうした形を、山麓の農民が巧みにとらえて、何か身近な物の形に見立て、昔から年々の農事――稲作が主であるが――を始めるための頼りにしてきた。