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パンドラのはこ

パンドラの匣

太宰 治

線上閱讀太宰 治《パンドラの匣(パンドラのはこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,644 字 · 386 頁

青空文庫

を、読みちらした。一行も理解できなかった。ただ、あちこちの活字に目をさらして、他の、とりとめのない事ばかり考えていた。

きょうは、阿呆の一日であった。どうも、下谷の家は難物だ。あの家に姉さんがいらして、そうして幸福そうに笑ったりなんかしているのかと思うと、何が何やらわからなくなってしまう。晩ごはんの時、

「夫婦って、どんな事を話しているもんだろう。」と僕が言ったら、兄さんは、

「さあ、何も話していねえだろう。」と、つまらなそうな口調で答えた。

「そうだろうねえ。」

兄さんは、やっぱり頭がいい。下谷のつまらなさを知っているのだ。

夜、のどが痛くて、早く寝る。八時。寝ながら日記をつけている。お母さんは、このごろ元気がよい。この冬を無事に越せば、そろそろ快方に向うかも知れない。なにせ、やっかいな病気だ。それはそれとして、五円できないかなあ。佐伯に返さなくちゃいけないんだ。きれいに返して絶交するんだ。どうも、お金を借りていると、人間は意気地がなくなっていけない。古本を売って、つくるか。やっぱり兄さんに、たのむか。

申命記に之あり。「汝の兄弟より利息を取べからず。