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パンドラのはこ

パンドラの匣

太宰 治

線上閱讀太宰 治《パンドラの匣(パンドラのはこ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 192,644 字 · 386 頁

青空文庫

2

古い時代と、新しい時代と、その二つの時代の感情を共に明瞭に理解する事のできる人は、まれなのではあるまいか。僕たちは命を、羽のように軽いものだと思っている。けれどもそれは命を粗末にしているという意味ではなくて、僕たちは命を羽のように軽いものとして愛しているという事だ。そうしてその羽毛は、なかなか遠くへ素早く飛ぶ。本当に、いま、愛国思想がどうの、戦争の責任がどうのこうのと、おとなたちが、きまりきったような議論をやたらに大声挙げて続けているうちに、僕たちは、その人たちを置き去りにして、さっさと尊いお方の直接のお言葉のままに出帆する。新しい日本の特徴は、そんなところにあるような気さえする。

鳴沢イト子の死から、とんでもない「理論」が発展したが、僕はどうもこんな「理論」は得手じゃない。新しい男は、やっぱり黙って新造の船に身をゆだねて、そうして不思議に明るい船中の生活でも報告しているほうが、気が楽だ。どうだい、また一つ、女の話でもしようかね。

2

君のお手紙では、君は、ばかに竹さんを弁護しているようじゃないか。そんなに好きなら、竹さんに君から直接、手紙でも出すがよい。