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うえすぎけんしん
上杉謙信
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁
彼の動静に耳すましながら、変化あらば、その都度謙信のあとより追馳に伝令を発せい」
「はっ。お旨のうち、よく分りました」
甘糟近江守は、馬上の謙信へ礼をして去った。――お旨のうち。それは謙信の希望する布陣の展開を意味する。――それを謙信が成し終るまでの半刻の機微なあいだを、いわば監視隊として甲軍に備えていよとの命令なのだった。
約一千の甘糟隊は、千曲の南岸を駆けて、十二ヶ瀬へ急いだ。
下流の雨宮の渡しからそれを凝視していると、忽ち小森の岸へ向って、渡河してゆく甘糟隊の影が、白い飛沫と、夜霧に煙って、人か水か、水か霧か、ただ幻の動くとしか見えなかった。
「――よし!」
謙信の駒も、脚を洗めて、川波をざぶざぶ渡っていた。
川水の涸渇しているときは、河原の水は大きな一筋にしかなっていないが、水源地の山岳に雨が降り嵩むと、忽ち、ここの広い盆地は、あたかも人間の動脈と静脈のように無数の水脈を描き出す。時しも秋、四方の水声はもっとも烈しい季節だった。
天まだ晦し
甘糟近江守の一隊をのぞいて、直江大和守の大荷駄隊を先頭に、全軍は渡りきった。馬も人も濡れ光っていた。
「叱っ……馬を嘶かすな」