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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁

青空文庫

重き陣幕

兵と同じ粗末な糧食を摂って、一椀の湯を篝のそばですすり終ると、中条越前守へ、

「物見の報告は、そちが聞いておけ。兵はなるべく十分に眠らせるように、また半夜代りの者共も、夜は寒い、明々と篝を絶やさず、身を温めて居眠るがいい」

と、いいつけ、自分もすぐ、夜霧に絞るほど濡れている陣の幕を壁と、楯を床として、ごろりと身を横にしてしまった。こういう簡素な生活には馴れきっている寝すがたである。そして草に枕し、露にまどろむ間に、彼は時折、詩を作り、歌などもくちずさんだ。

能登遠征のときの

霜満軍営秋気清

数行過雁月三更

は、ずっと後年の作であるが、青年ごろの作かと思われるものに、次のような一首がある。

ものゝふの

鎧の袖にかたしきし

枕にちかき

はつ雁の声

重き陣幕

小荷駄奉行の直江大和守は、ふもとの土口に陣していたが、やはり、油断ならずと、部下は寝せても、ひとり寝もやらず、床几にかかったまま、篝へ向って居眠っていた。

――と。小銃のひびきがした。

近い。

らんと、眼をあげて、余韻を聞いている大和守のひとみに、篝の火が、煮えていた。

「どこだ。方角は」

陣幕の外にゆくと、哨兵のひとりが、