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うえすぎけんしん

上杉謙信

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《上杉謙信(うえすぎけんしん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 129,102 字 · 256 頁

青空文庫

野彦の声

と、槍の穂を揃えて遮った。

放生月毛はこのあいだに、空鞍を乗せたまま長坂長閑の陣地内へ、向う見ずに狂奔してゆく。

そして、謙信はといえば、そこへ逸早く、鬼小島弥太郎が、拾い馬の口輪をつかんで曳き寄せて来たので、その背へ跳び乗るが早いか一鞭加えて、

「返せ。返せ」

と、旗本たちへ呼びかけながら、ふたたびむらがる敵の中を割って、味方の内へ迅り去った。

野彦の声

来ることも迅かったが、去ることも迅かった。

それにしても、謙信が、なぜそう引揚げを急いだかというに、彼の旗本と、敵の旗本とが、槍ぶすまを並べ合った、猛烈な死闘を現出したせつな、武田の方の原大隅が大声で、

「すわやお味方の勝機は今この時と覚えまするぞ、あれあれ、妻女山のほうより夜来の別動隊、高坂どの、馬場どの、甘利どの、小山田どのなどの諸部隊、迅雲の如くこれへ駆けて来まするわ!」

と、何度も呶鳴っていたからであった。

謙信が、今朝から有無の勝敗を決せんといそいでいたのも、また心中常に気にかけていたのも、実にその別動武田軍十隊の移動にあった。

それに、敵の首将信玄に対しては、なお遺憾な一太刀を残したにせよ、彼の中軍は蹂躪し尽したといえるので、年来鬱積していた宿念の一端を放つとともに、