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ちゅうごくかいきしょうせつしゅう

中国怪奇小説集

岡本 綺堂

線上閱讀岡本 綺堂《中国怪奇小説集(ちゅうごくかいきしょうせつしゅう)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 179,458 字 · 363 頁

青空文庫

「この駅の宿舎には昔から凶いことがしばしばあるのですが、その妖怪の正体は今にわかりません」

小人

唐の太和の末年である。松滋県の南にひとりの士があって、親戚の別荘を借りて住んでいた。初めてそこへ着いた晩に、彼は士人の常として、夜の二更(午後九時―十一時)に及ぶ頃まで燈火のもとに書を読んでいると、たちまち一人の小さい人間が門から進み入って来た。

人間といっても、かれは極めて小さく、身の丈わずかに半寸に過ぎないのである。それでも葛の衣を着て、杖を持って、悠然とはいり込んで来て、大きい蠅の鳴くような声で言った。

「きょう来たばかりで、ここには主人もなく、あなた一人でお寂しいであろうな」

こんな不思議な人間が眼の前にあらわれて来ても、その士は頗る胆力があるので、素知らぬ顔をして書物を読みつづけていると、かの人間は機嫌を損じた。

「お前はなんだ。主人と客の礼儀をわきまえないのか」

士はやはり相手にならないので、かれは机の上に登って来て、士の読んでいる書物を覗いたりして、しきりに何か悪口を言った。それでも士は冷然と構えているので、かれも燥れてきたとみえて、だんだんに乱暴をはじめて、そこにある硯を書物の上に引っくり返した。