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ごべんのつばき
五瓣の椿
山本 周五郎
線上閱讀山本 周五郎《五瓣の椿(ごべんのつばき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 頁
しかしいま、それも怪しくなっていた。母親から来る金は、秋にはいって半減されたし、父親の忠兵衛は彼に見切りをつけて、親類から養子を取ることにした、ということを母親が知らせて来た。
――養子の話は威しだ。
彼はそう思ったけれども、噂はたちまち弘まって、ちかごろでは馴染の茶屋なども、勘定が少し溜るといい顔をしなくなった。こういうときにお倫があらわれたのである。どうして彼女が自分にうちこんで来たか、彼には見当もつかなかったが、古梅庵で置き手紙を受取ってから五日めに、瓦町の家へ使いの者が手紙を届けに来た。
――どうしてこの家を知ったろう。
誰かに聞いたのか、それともまえから知っていたのか。お倫に逢うとすぐに慥かめてみたが、彼女は微笑するばかりでなにも云わなかった。
「どう思う、米八」
と彼は酔ってぐらぐらする躯をまっすぐにしながら云った、「――春から逢いだして、もう冬だ、そのあいだ月に三度か四たびは逢っている、が、どこでおれをみそめたか、どうして瓦町の家を知っているか、どうしても云わないんだ」
逢うときは日と時刻と場所を、お倫のほうから知らせて来る。逢っているうちは極めて嬌かしく、いまにも肌をゆるしそうにみせながら、もう一歩というところで巧みに躱されてしまう。