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ごべんのつばき

五瓣の椿

山本 周五郎

線上閱讀山本 周五郎《五瓣の椿(ごべんのつばき)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 149,721 字 · 296 頁

青空文庫

、岸沢をはなれてすっかりおちぶれてしまったが、仲次郎のお鉢はおめえにまわって来た」

六は茶碗へ口を当て、さもうまそうに喉を鳴らして飲み、大きなおくびをして続けた、「――蝶太夫師匠は岸沢のたて三味線で、世間からやんやと騒がれている、柳橋きっての名妓をかみさんにしたうえ、なお女にも金にも不自由はねえ、それに比べると仲次郎は可哀そうに、いまでは門付をしながら酒浸りで、よく色街の裏なんぞに酔い潰れてるそうだ」

蝶太夫はくすくす笑いだした。手を伸ばして汁椀のつゆを切り、それに酒を注いで、ゆっくりと二た口すすった。

「そいつあ気の毒だ」と彼は云った、「あの仲次郎がそんなざまになってるとは気の毒だ、どうだ六助、おめえ引取って世話をしてやらねえか」

「相談ずくでな」と六が云った、「七年めえ、なんのために喧嘩を売られ、なんのために腕を折られたか、っていうことを話して、相談したうえでなんとかするとしよう」

蝶太夫はまた笑った、「うまくゆくといいな」そしてまた笑った、「うまくゆくように願ってるぜ」

「云うことはそれっきりか」

「訊きてえことが一つある」蝶太夫はひそめた声で云った、「おめえ上方から帰って来たばかりで、それだけのことをよく探り出せたな」