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みやもとむさし

宮本武蔵

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 頁

青空文庫

二

真っ先のが叫んだので、

「どうした?」

次のがいうと、

「もう船着茶屋が床几を重ねておる。川にも船が見えぬ」

「出てしまったか」

弾みあう息を揃えて、どやどやそこに佇んで、しばしは出し抜かれたように川面を見ていたが、店をしまいかけた茶屋の者に訊ねると、たしかに小猿と前髪は乗ったとある。そしてまた、その仕舞い船がここを離れたのはつい今し方で、まだこの先の船着場である豊崎までは、遡っていまいともいう。

それに下りは速いが、上り船は遅々たるものである。陸を走っても追いつきましょうという言葉に、

「そうだ、何もがっかりすることはない。ここで間に合わなかったとすれば、もう急がずともよい、一息入れて行こう」

茶をのんだり、餅や駄菓子などを頬張った上、さてまた、川に沿って暗い道を急ぎに急いで行った。

ひろい暗の彼方に、銀蛇に似た河のすがたが二股に裂けていた。一すじの淀川が中津川と天満川とに岐れるところである。その辺りにチラと灯が見えた。

「船だっ」

「追いついたぞ」

七名は色めき立つ。

枯れ蘆はみな刃もののように光っていた。一草の青いものすらない田や畑であった。霜をふくむかと思われるような風だったが、寒いなどということは考え出されない。