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みやもとむさし
宮本武蔵
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《宮本武蔵(みやもとむさし)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 185,809 字 · 369 頁
しゅくっ……
と唇や鼻から突き出る嗚咽を、両手でおおって、肩をふるわせた。
「オオ……」
思い出したのである。
武蔵は、彼女の今の一瞬の姿に記憶をよび起した。その姿にはまだ、伊吹の麓で袂の鈴を鳴らしていた頃の、世間に傷つかない処女らしさが残っていたからであろう。
いきなり、逞ましい腕が、彼女の病後のような薄い肩を抱きしめた。
「朱実さんじゃないか。――そうだ、朱実さんだ。……どうしてこんなところへ来たのか。……どうして? どうして?」
たたみかけていう武蔵の問は、よけいに彼女のかなしみを揺すぶった。
「もう、伊吹の家にはいないのか、お養母さんはどうしている?」
お甲のことを訊ねると、武蔵は当然、お甲と又八の関係に思い及び、
「今も又八と一緒に住んでいるのか。――実は今朝ここへ又八が来るはずになっているのだが、おまえが代りに来たわけではあるまいな」
すべてが朱実の心を外れてゆく言葉のみであった。
武蔵の腕の中で、朱実はただ顔を横に振って泣いていた。
「又八は来ないのか。……一体どういうわけだ。わけをいえ、ただ泣いているだけでは分らないではないか」
「……来ません。