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しん・すいこでん

新・水滸伝

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁

青空文庫

明々白々、あれまで、書いてしまっては消しようもない」

「……。……?」

宋江はいつまで、じいんと差し俯向いていたが、はっと酒中の記憶をよみがえらせた容子である。さすがに蒼白になった。しかし悪びれる風もない。椅子に腰をくずし、首を垂れて「――一生の不覚」と詫びた。

だが、詫びられた戴宗のほうこそ、今は極度につきつめていた。進退きわまった立場なのだ。すでに、蔡九の命で彼は牢城の軍卒頭以下一隊の兵を、城隍廟の廟前に勢ぞろいさせ、しばらく待てと待たせてあるのだ。

そして、ちょんのま、ここへ姿を現わしたのは、彼の道術“神行法”の秘を使って、風のごとくさっと忍んで来たのである。といって何をはなしている隙もない。ただ戴宗が持って来た一計は、

「宋君、ぜひもない。君を縄目にはかけるが、君は偽狂人になってくれ。蔡九の前へ出たら、あらぬ口走りと狂態をつくして、ひとまず吟味の手を焼かすのだ。あとの思案はあととして」

「いや、やめましょう。戴宗どの、覚悟しました。縛ってください」

「いや縛れん。あなたをここで見殺しにしたら、友人の呉用を初め、梁山泊の面々にも一生末生うらまれる。