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しん・すいこでん
新・水滸伝
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《新・水滸伝(しん・すいこでん)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 684,899 字 · 1374 頁
登州大牢破りにつづき。一まき山東落ちの事
登州大牢破りにつづき。一まき山東落ちの事
病尉遅
それは孫立の綽名だ。
いろ青白く、青粘土みたいに沈んでいるが、まなこは鯉の金瞳のごとく、黒漆のアゴ髯をそよがせ、身のたけすぐれ、よく強弓をひき、つねに持つ緋房かざりの一鎗も伊達ではないと、城内はおろか、守備隊の中でも、こわがられている孫提轄だ。
弟の女房が危篤と聞いて、
「わからないもんだな。鬼のかくらんということはあるが」
と、妻を車に乗せ、自身は騎馬で、兵卒十人ばかりを供につれ、急遽、休暇願いを出して、明けがた十里牌へ急いで来た。
だが、弟の店へついて、奥へ迎えられてみると、なんと出て来たのが危篤のはずなその※大虫で、弟の孫新もけろりとしたもの。――孫立夫婦は、呆ッ気にとられるよりはまず腹が立った。
「おい、おばさん。孫新もだ。悪洒落はいい加減にして貰いたいな。こっちは官の勤務が忙しい体なんだ」
「なんともすみません。嘘もよほどな口実でなければ、すぐ来てはくださるまいと思いましたので」
「ひとを驚かすにも程があらあ。いったい何のためにこんなまねして呼んだのだ。俺ばかりか妻までを」
「じつは兄さん。不慮の災難が持ち上がッて、この弟夫婦はよんどころなく店を畳み、不日、梁山泊へ仲間入りいたします」